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神威の書 : 第一章 : « 第六節

第六節

「ええ~っっ。これ。HSLなのぉぉぉっ」
「っ……」
…と…。
僕の耳に。
いきなり声が飛び込んできた…。
…あ…びっくりした……。
………。
「……」
どうやら。
ライナーに一緒に乗り込んだ。
二人連れの女の方の声…みたいだ…。
……………。
……。
「……」
…あ…ぁ…チップ…。
チップを入れないと…。
チップ…チップ…。
ジーンズのポケットを探る……。
「………」
…ん…?
れ…?
あ…今さっき…また……。
…何か……。
………。
何…考えて…た…?
……。
………。
…………。
…あ…。
…チップを……。
チップ……。
「………」
僕は。
ポケットからチップを一枚取り出して。
ドア口のソーサーに入れた……。
…かしょ…。
「…………」
……。
…何だった…ろう……?
何を…考えて…た…?
…………。
……。
…かしょかしょ…。
かしょ……。
…チップが…。
ソーサーから落ちて行く…。
…。
よくあるんだよな…。
…こういうこと…。
……さっき…も……。
…かしょかしょ……。
……かしょん……。
………。
……。
…あぁ…だから…。
それは……。
辿らない方が…いい…って……。
………。
……。
♪ シャラララララ・フウフウ ♪
♪♪ シャラララン・フウフウ ♪♪
♪♪♪ シャラララン・ラルラ ♪♪♪
♪♪♪♪ シャラララ・ラン ♪♪♪♪
--- Thank you for the heart ---
-- アッパー・クラスを認識しました。 --
-- そのままご利用ください。 --
……。
…………。
クラスチップが認識された…。
「………」
僕は軽く息を吐いて。
近場のソファに腰をおろした。
…………。
………
「どぉしよぉ。どぉしよぉ…。あ~ちゃん……」
「どうしようって言っても。みんみん……」
…。
………。
二人連れの声がする……。
……………。
………。
「降りる?降りられる?ねぇ…?」
「無理だよ。もう。走っちゃってる……」
……。
………。
…やっぱり…。
誤乗車だったのか……。
…………。
………。
「えぇ~ん…」
………。
…………。
二人連れの頭髪色は。
男が緑で女が黄…。
つまり…。
ミッドル・クラス……。
……………。
………。
「間違っちゃたんだから。しょうがないよ。みんみん。誰も咎めないって…」
「でもぉ…。きちんと決まりを守る人が。善い人だってぇ…」
………。
……………。
ライナーには。
HSLとLSL の2種類があって。
一般的にミッドル・クラスは。
LSLを使うことになっている……。
………。
………。
「まあ。そうだけど…。いいじゃないか。みんみん。寄付できるよ」
「あっ。そうか。そぉだよね。そう考えればいいんだぁ。あ~ちゃん。かしこぉ~い」
「へへ~。そぉかなぁ~」
きゃらきゃらきゃら……。
きゃらきゃらきゃら……。
きゃらきゃらきゃら……。
きゃらきゃらきゃら……。
……………。
………。
ミッドル・クラスが。
HSLを利用する場合。
通常の場合の。
倍以上の。
クラス・チップを。
ソーサーに入れなければならない…。
だが。
その。
通常よりも余分に入れたチップは。
寄付…として、認められることになっているのだ。


---*---* 寄付 *---*---


寄付とは。
他に対する私的な供給のことを言う。
それは。
エデンにおける。
自己犠牲の信条を現す。
最も崇高な行為であり。
エデンと。
edenの神に対する。
感謝の心の現われである。
寄付は。
善い行いとして。
個人のポイントに加算される。
それは。
感覚検査実行時に。
個人の得点に計上されるものである。


---*---* 知識より *---*---


………。
つまり。
寄付を行えば。
善い行いとしてポイントされ。
そのポイントは。
年2回の検査の時に。
得点として加算される…。
…………。
そしてこの。
寄付も含めた。
善い行いとされる項目は。
ロア・クラスに行くほど、たくさん設けられていて…。
だから。
ロア・クラスほど。
善い行いをする機会がたくさんある…。
…ということになる……。
それは。
ロア・クラスに対する、配慮ということらしいのだが……。
………。
…………。
「あ~ちゃん。2個でいいんだよね」
「うん。そう。いつもより倍以上だから」
「あ…じゃあ。3個でもいいの?」
「いいんだよ。余裕があれば」
「みんみん。ない。2個しか」
「僕もない。いいよ。それだって。いつもよりは2倍だもの」
「そぉだよね。うんと。じゃあ…。2倍の善い行いしたことになる?」
「う~ん…。それはちょっと…。違うような気がするなぁ~…」
……………。
………。
…違うだろ…。
おもいっきり……。
………。
「あっ。あ~ちゃん。みんみんね」
「なに?」
「ポイントたまった。10点になった」
「お。やったな。みんみん。じゃあ。今度の感覚検査は楽勝だね?」
「うん。もしかしたら。みんみん。あ~ちゃんとおんなじクラスになれるかも」
「そうか。そうしたら。結婚できるね」
「結婚…。みんみん。あ~ちゃんと。結婚したい」
……………。
………。
…良かったね…。
ぁぁ…結婚でもなんでもしてく…。
………。
あぁ~また…。
話を聞いてちゃってた……。
…はぁ~………。
そんな場合じゃ…。
…………。
………。
--- Attention Please ! ---
--- 次は d-6 に止まります ---
あ…。
…d-6……?
…そうだ。
そんな場合じゃない。
僕は。
会所に呼び出されている身分なんだ……。
………。
……降りなきゃ……。
「……」
僕は立ち上がり。
車内のゲート・プレートに足を乗せた……。
…………。
……。
グウゥゥゥーン。
ホームに入る瞬間に。
…感じる…圧迫…感…。
…………。
……………。
…がっくん……。

ライナーが止まった…。
…。
ぷしゅー。
ドアが開く……。
………。
かつ……。
……………。
僕はホームに足を踏み出した。
それから。
地上に出るエレベータに向かった。