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こ…これ……。
これ……は……。
………。
「みみ、認める?タキ君。こ、これ。じじじ、自分の作品だって。」
……。
驚いて。
半身(はんみ)で固まっている僕に。
所長が声を掛けた……。
「………」
…な…ぜ……?
これが……?
ここに…?
………。
「ね?タキ君。こ、これ、持って、どど、どこ、行くつもりだったの?ん?」
………。
……。
………。
僕は。
所長の声を空(そら)で聞き。
視力と聴力の限りを尽くして。
その作品を追った……。
………。
音と映像……。
…エフェクト具合……。
……。
かなり変形はされているが。
元データは。
間違いなく。
僕の作品(もの)だった……。
………。
「………」
………。
「よよ、良く出来ているよ?すす、すごく、いい。こ、これなら、どこの会所だって、よ、喜んで、ききき、君を、迎えてくれるよ。だだって、これを出せる会所は、き、ききききっと、すごく、かかか、神の祝福を受けられるもの……。」
「………」
「でで、でもね。タ、タキ君。そ、それは、それはね。よよよよよ、良くない。良くないことだよ。ん?そ、そそそ、それは。それはね。か、かかかか、神の義に……。は、は、はははは、外れて……。外れてだね。タ、タキ君……。い、いいい、いくら、作品が、よよよ、良くっても……。そ、そそそ、それは、それは……。つつつ、つつつつつ、罪、罪だよ。え?タ、タキ、タキ君……。き、きき、聞いている?ん?」
「タ、タキさぁん。なんとか言って下さいよぅ。オレらまで、疑われて……」
「そ、そやで。タキさん。あんたひとり、どこぞに移らはるのは勝手やけど、なんでオレらまで、疑らうたぐれなあかん?」
「き、きき、聞いてる?ね?タ、タキ君」
………。
所長が。
少しばかり。
声を高くして言った……。
………。
僕は。
スクリーンから目を外し。
ゆっくりと。
所長を見た…。
……。
クリスプが。
一層激しく。
上下に動いている……。
………。
……。
…そ…そ…ういう……事…?
………。
…そういう……。
………。
……つまり。
…皆は。
僕が。
この作品を持って。
どこか。
別の会所に…行くと……?
つまり…。
転身…するつもりだと…?
……。
でも…なんで…。
じゃあなんで。
この作品が。
ここにあるんだ…。
………。
「タ、タタ、タキ君。だ、だだだんまりなんて。ひ、ひひ、ひひひ、卑怯な人がすることだよ?ん?タキ君…」
「どうして…」
「…な、何、かね?」
「どうして。この作品…。ここにある……」
「タ、タタタタタタ、タキ君!わ、私が聞いているのだよ。え?聞いているのは。私なんだよ。タキ君。き、君はね。答えればいい。こここここ、答えればいいだけなんだよ!」
「………」
………。
激しい口調になった所長は。
頭から。
顔から…。
汗を流して……。
………。
………。
「…ふーっ」
僕は。
少し大き目のため息をついた……。
………。
皆が僕に注目している……。
その中で。
ハタ氏だけがスクリーンを見つめて……。
…僕には…背を向けてる……。
………。
…僕は……。
………。
「は……」
僕は。
もう一度小さ目の息を吐き。
そして。
…ぼそり…と切り出した…。
「……僕…は…」
すると…。
「静かにしてくれないかなぁ」
ハタ氏が声を上げた…。
「今。僕。入っているんだよね」
ハタ氏は。
スクリーンから目を離さずに。
言葉を続けた……。
「見ようよ。作品はさ。最後まで」
「あ、で、で、でもね、話を……」
所長があわてて切り出す…。
……。
「だから。終わってからでいいじゃない?僕。途中でoutするの好きじゃないんだよね」
「あ、そ、そ、そうだったよね。そう……。で、でも……」
………。
取り繕う所長など。
まったくお構いなしに。
ハタ氏は。ずっと。
スクリーンの方を向いたままだ……。
「……」
「…………」
「あ、じゃ、じゃ、見ようか。見よう……。そ、そうだ……ね?さ、ささ、作品は、最後まで、見よう」
………。
ハタ氏は。
再び作品に入っている…。
所長のフォローにはもう答えない……。
………………。
僕は…。
「……」
僕も再び。
室内にサラウンドする。
映像と音響に集中した……。
………。
………………。
………。
…これは……。
この作品は……。
……。
………。
…これ…は。
……僕の……。
…………。
そう…だ…。
…もう…ずっと在る……。
……僕の中に…。
…………。
そうだ…この…。
…僕の中の……。
この…もやもやと。
何とも言えない…。
…よく…わからない……。
でも。
僕の中に。
…確かに在る……。
………。
この。
僕の中で。
渦巻いている。
不確かな確かさ…。
…みたいな……。
……この妙な…感覚……。
………。
それを…。
……。
もっと。
…実感…した…く…て……。
……。
…それで……。
創り始めただけ…で……。
………。
だから……。
………。
パブリケーション…するつもりなんか……。
……。
転身…するつもりなんか……。
……。
………。
……。
「………」
スクリーンの映像転換速度が速くなった…。
エンディングが近い……。
………。
だが。
僕はまだ。
この作品のエンディングを。
完成させてはいない……。
………。
……。
………。
…ひゅん……。
………。
……。
案の定。
確固たるエンディングを迎えないまま。
音と。
映像が途切れた……。
………………。
一瞬。
室内が静寂に満ちた……。