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神威の書 : 第二章 : « 第三節 »

第三節

「僕はさ」
張り詰めたような静寂を破って。
ハタ氏が第一声を切った……。
「………」
「僕はとにかく。面倒な話は抜きにして。この作品のエンディングが見たいよ」
「え、そ、そ、それは……。ハタ君……」
所長が慌てて聞き返す……。
「だからさ。どういうやり方か…は任せるから。そのための所長でしょ?」
「え、え、え、そ、それ、は……」
「僕はさ。タキ君の作品が好きなんだよね」
「あ、そ、そ、そう。そうだよね?そう。そうだ。ほ、ほら。タキ君。ハタ君も、そう言ってくれている。ね?だから、ば、ばば、馬鹿な気は、起こさずに……」
「………」
「ね?まだ、転身していないんだろ?それとも…もう……?」
「………」
「タ、タタタ、タキ君。黙ってちゃ、わからないだろ?」
………。
「…は……」
僕は。
小さく息を吐き。
知らずに力の篭っていた。
両肩から。
少し力を抜いた。
………。
そして……。
…口を開いた……。
「…この…作品は……」
「………」
「…この作品は……。公開…するつもり…は…」
「……」
「あ…ありません…でした」
「………」
「………」
「ま、ま、また、そんな……。う、ううう、嘘は、いけないよ。嘘は……。嘘はね、か、かかか、神が最も嫌う……」
「嘘では…ない…です」
「………」
「………」
「ほ、ほほほ、本当かい?」
「…本当…です……」
「じゃ、じゃあ。君は……。こ、これだけの作品を。た、たたた、ただの趣味で。趣味で創っていたとそ、そそそ、そう言うのかい?」
「……そう…です……」
………。
…胸が…重い……。
………。
「で、でもね……」
「あのさ」
言いかけた所長を遮って。
ハタ氏が口を挟んだ。
…………。
「あのさ。作品が、タキ君のもので。まだ、公表してないって言うなら。もういいんじゃないの?後は。著作権譲渡の契約してよ。実際の話。TOPクリエーターのタキ君がいなきゃ、ここ、なくなっちゃうんだしさ」
「そ、そ、それは、待ってよ。ね?待とうよ。じゃ、そ、そ、そう。そう、だね?じゃ、タキ君。ぼ、僕は、君を信用して、いいい、いいのかな?」
「………」
「タキ君」
……。
所長が返答を催促する……。
……。
だが…。
…yes…と言えば。
何なのだ……。
………。
「タ、タキさん。契約してや。そやないと、オレらまで、あんたと一緒に、バックレかますと思われてん」
「………」
「そ、そーっすよぅ。頼んますよぅ。タキさぁん」
………。
……公表するつもりはない……。
だが……。
…それでは通用しない…の…か……。
………。
「は……」
…息を吐く……。
…………。
「タキ君。わかるだろ?もう、子供じゃないんだしさ。どういう経路にしろ、こうやって人目に触れた以上、もう、それは。君のプライベート・ワークじゃないんだよ」
……。
…ハタ氏が…言う…。
………。
「………」
「そ、そ、そう、そうだよ?だ、だから、こうして、みんな心配しているんだよ?ね?ほら。カンザキ君も。コココ、コンタニ君も。」
「せ、せや」
「そーっす」
…皆が…。
口を揃えて言う……。
………。
……。
………。
「は……」
……息が…浅い……。
………。
……。
僕は…。
………。
……。
「…わ……わ…かり…ま…した……」
…僕は…言った……。
………。
……。
………。
「そ、そ、そう?そうか。そうだね。うん。そうだ。良かった。うん。じゃ、ここ、これ、けけけ、契約書だからね?ささ、書いて。」
……。
所長が。
僕の目の前に。
一枚の紙切れを差し出した……。
………。
がたん……。
ハタ氏が席を立った……。
「あ、あ、ハタ君。行く?行くかい?そ、そう。そうか。い、忙しいのに。ごご、ご苦労だったね……」
……。
「--。タキ君」
声を掛けた所長には答えず。
ハタ氏は僕を見て言った……。
「タキ君。コンプリーション楽しみにしてるよ」
「……」
………。
…かっ……。
かつかつ……。
ハタ氏は。
そのままドア口に向った……。
かつかつかつ…。
皆が注目する中。
フロアに足音を立ててハタ氏が歩く……。
………。
がちゃ……。
そして。
ドアを開けかけた時。
ふと立ち止まり。
振り向いて…。
……。
「<SCRIPT LANGUAGE = "BScript">
<!--
If thanks=1,go to "KANAN",end;
//-->
</SCRIPT>」
……。
そう言って…。
ばたーん。
……。
…出て行った……。
………。
……。
「……な、なんや?なんやて?ハタ氏…」
「えー。なんか…。構文みたいだったスよねぇ?」
………。
「………」
「あ、あ、い、いい。いい、いいんだよ。君達は…。そ、それより、喜ぼうよ。ね?か、かかか、感謝して、ね?タキ君が契約するから……。あ、あああ、安心して…ね……?さ、じゃ、タキ君は。これ……。ささささ、書こうか?ね?ほら、ぺ、ぺぺぺぺんだよ?」
「………」
所長がそう言いながら。
僕に万年筆を渡した……。
「………」
僕は。
目の前の紙切れに。
…視線を…落とした……。
………。
著作権譲渡契約書
………。
何度か…。
…見慣れた…文字……。
…そして……。
………。
……作品タイトル……。
………。
…タイトル……。
………。
「は……」
僕は今日。
何度目かの。
小さなため息を吐いた……。
……。
………。
…かり……。
かり。かりかり……。
……紙に。
…ペンが走る…音……。
……かり。かり。かり……。
……。
………。
…………。
作品タイトル:LUMINESCENCE
契約者署名:Tomonai Taki
……。
………。
蒼いインクが紙に滲んだ……。